輪ゴムでヒマを潰せるか

混んだ電車。隣の老人が絶え間なく手をごそごそしていて、何をしているのかと思ったら両手の人差し指と親指に掛けた2本の輪ゴムを組み合わせてそれらをどうにかしようとしているようだった。ほとんどの人がスマートフォンを弄っているなかで、輪ゴム。僕は釘…

石蹴りインザ河原オブ賽

賽の河原で蹴飛ばした石が砂上の楼閣を直撃する。砂上の楼閣という言葉に対して、僕はどうしても砂場で作ったお城をイメージしてしまう。いっぽう水のほうーここは河原だからな、では泥船が沈みかけている。が、船頭が多いので丘に登る。だからって安心する…

こぼれる・お酒

ひとり静かに部屋で横たわっているか、どこか外でスケッチでもしている状態が僕の摺り切り一杯で、それ以上に何かが加わると、そのぶんは大体たちまち溢れてしまう。 そこで溢れる気分の量と、僕が自分に流しこむお酒の量は正比例している。点検すれば分かる…

髪の毛つんつんビジネスおじさん

紙の日経バッサバッサ 髪の毛つんつんビジネスおじさん 足高く組む満員電車 革靴ぴかぴか 顔てっかてか

散らかり頭

絵を描く部屋の床がほとんど全て見えている。この3年ほどなかったことだ。他の部屋はなんとかできても、この部屋は無理だった。去年も一昨年も、描き損じやゴミに埋もれたような状態で描いていた。 手に持ったものをどこにやったら良いか分からないとか、そ…

音とにおいと

梅雨の合間ってことになるのかな。いまはほんとうに素晴らしい気候だと思う。 窓を開けて呼吸していているだけですこし嬉しくなる。外を走る車輌が立てる音もやわらかくて親密なものに聞こえる。 選挙のたびに票を入れてる政党の街宣車とか、バカでかいバイ…

夕立ち

疲れたバスが止まる直前、外が白く光った。 降りたら滝みたいな雨が降り出した。 少しまてば弱くなるさね。そんなひとたちがバスを降りてもぎゅうぎゅうで狭いゴムの屋根の下。 近すぎだ、おまえら。おれが近すぎる。 歩くたびに靴ががぽがぽ言った。いちど…

水溜り

些細のことでその日の残りを捨ててしまいがちだ。 自分が飲む酒のほとんどがその手っ取り早い手段にすぎないと気づいてからは、とりあえずひとりでは飲まないように、どちらかといえば、あるべき望ましい姿勢としては、程度には気をつけているけれど、酒みた…

貧すれば

電車では人を押さないように避ける。スーツ着た坊やのリュックサックや、鼻先で揺れる威張ったおっさんの肘で真直ぐ立てなくなる。 重かろう。疲れていよう。体勢よりは顔を守るために吊革に掴まる。イヤフォンで耳を塞ぐ。 レジではイヤフォンを片方外す。…

平穏不安

日差しがずいぶん春らしくなっている。この季節はしんどくなりがちだ。どこにも行くところがなかった春のことも思い出すし。 この冬はあまり落ちこまなかった。なんだか冬を越した気がしない。 知らぬ間にまた何かやらかしてやしないか。 これからなにかひど…

わからなさ。週末。

異常無し

今週の仕事、だいたい良し。来週の予定、たぶん良し。 見直しの見直し、やるのが僕ではしょうがない。 振り返ってー!帰りの挨拶!虚空に向かってー!なんとなーく黙礼!これは剣道や空手道場の名残り。 向こうにまだあと数人。家族もあるだろうに。よく知ら…

天使インマイアイズ

畳に寝転がって天井の蛍光灯に目をやると、白い覆いのなかに羽虫の死骸があるのとキラキラ光るものが動き回るのが見えた。 https://ja.m.wikipedia.org/wiki/ ブルーフィールド内視現象これだ。網膜の血流のなかの白血球が見えるらしい。僕はこのキラキラを…

虫の声

本をめくりながら、蝉とか草むらの虫が鳴いてるなあと思っていたが、よく考えたらいまは真冬だ。ちなみにうちは五階だ。なにがそう聴こえるのか気になって、部屋をうろうろ。冷蔵庫とエアコンの駆動音の重なりからそんなふうに聴こえるようだった。 いったん…

2018年のヴィクトリー・コーヒー

パンパカパーン! 「…発表!発表!! …偉大なる兄弟と党の指導、そして同志のたゆまぬ努力のもと品質が飛躍的に向上!それにともない実質的増産に成功! …我らが潤沢省の〇〇同志は、本日の定例会見においてヴィクトリー・コーヒーの配給量を来月から90gに、サ…

お正月 VS 2年前

割と嫌がってみせたのに、それでも友人が来るというので今日は主に家の掃除をしていました。気を使うような相手でもないけれど、うちは基本的に非人道的レベルで散らかっているのでこういうことはとても面倒です。この年末年始はそれをだいぶ整理した。つい…

宇宙、日常、戦争

最寄りの駅にはツタヤがある。ここ数ヶ月、毎週同じ映画を借りては見ないまま返すことを繰り返している。見てもないのに延滞料を払うときの馬鹿馬鹿しさはなかなかのものだ。 こないだゴダールの『アルファヴィル』をレンタルすること7回目くらいで見た。良…

眠りにつくまで

近頃は酔うまで飲めない。翌朝残る。 枕のカバーを取り替え、耳栓を押しこむ。アイマスクもおでこに控えてる。 床に就いてから布団乾燥機のスイッチを入れる。足元にノズルが刺さってる。膨らむ袋みたいなやつは外してある。こいつの「コー」って音は落ち着…

夕刻

夕刻、スーパーの前のテラス。焙煎機を世話してるいつものコーヒー売りのおばさん。オレンジ色の浮いたバンダナ、白い猫の描かれた黒いエプロン。こういう業態もやるコーヒー豆屋のパートさんだろうか。時間的に、きょう最後の焙煎だろうなと思いながら、少…

暗い部屋で胡座をかいて

コーヒーを啜りながら、向かっていた机の方を眺めた。引きっぱなしの椅子に浅く腰掛けて、机にもたれるように肘ついて仕事してる男の姿が思い浮かんだ。着ているものは僕と同じだが、僕より体格が良い。 戻るのが億劫だ。

今日もいろんなものを見た

比喩でなく死のうとした子らを見た。そうでない子らも見た。好きに描いてみなと言ったら、悲嘆や牢獄や損壊した人体を描く子たちを見た。団欒を描く子もいる、勿論いる。 大人たちの仕事を見た。仕事する大人たちを見た。見てくださいこの子の絵。この子も、…

『コウルリッジの花』

…ある男が夢の中で楽園を通り過ぎた。男は、そこに訪れた証として一輪の花を授けられる。目覚めた男の手にはその花が握られていた…この男は、そのあと、どうなってしまうのだろう?…というコウルリッジの着想を、ボルヘスが書いていた。とても好きなイメージ…

頭蓋

あるいは天蓋。どっちでも良い。同じこと。空っぽ。蓋がある。ドーム型がしっくりくる。 そこに星。もしくは穴。それかゴミ。 内側。声。跳ね返る。ずっと喋ってるこいつ。 誰?こいつしか知らない。 本当にずっとか?よく分からない。 今度は変わったぜ?よ…

休日は心の洗濯、それもこれもフルオートマティック

このあいだ洗濯機が壊れた。いっけん普通に起動するが、洗ってる途中でアラートが鳴ってそのまま動かなくなる。そうなってはじめて気づいたのだが、全自動洗濯機には緊急的に水を抜くための手動操作が存在しない。洗面器で掻い出しきれない水はどうなる?腐…

今朝は遅出のはずだった

少し時間があったのでコンビニの前でプロテインを飲みながら煙草を吸っていると、ホームレス風の車椅子の男に煙草をくれと言われた。僕は手巻きしか吸わない。 人が舐めた煙草を吸うなんて嫌だろうと思ったので、出来るだけきつく巻いた一巻きを糊は自分で舐…

参道で

10年くらい前に付けた些細な傷の痕がまだある。まったく大したことのない怪我だったのに不思議だ。 現場、というか山ん中でひとりだった。落ちてる枯れ枝を片付けといて、とだけ言われていた。やり始めてみると枝は無限にあった。だんだん横着になり、大きめ…

空色、黄色

長年の友人と、長くお世話になっているご婦人宅の庭の手入れに行った。伸びた木々の手入れのほかに、高い所になっている八朔の収穫を頼まれた。あれが気になってるから採っておいて、と彼女は言うけれど、近ごろは採ってもほとんどぜんぶ僕らにくれてしまう…

夜道の画鋲・見たことのないもの

駅のタイルで足が滑るような気がした。改札を抜けると今にも出そうなバスが見えた。考えずに走った。僕のどこかで何かがカチカチ鳴っていた。走りついた目の前で乗車口が閉まった。コンマ数秒の落胆。かわりに別の扉が開いた。 "前からどうぞー" 「…ありがと…

なんとも言えないわびしい気持ちになったことがあるかい?

仕事先の隣家の婆さんに、うちの庭のツタも取って!と言われた。たまにいるんだよな、こういう厚かましい人。それをやって手間賃をもらうのが俺たちの仕事なんだけど。とか思いながら、受注先と近隣の関係を考えて言う通りにした。時間はかけなかった。かけ…

まだ生きて、夢など見ている

職場の飲み会。大学の新入生向けレクリエーションみたいな余興。「お互いの下の名前をちゃんと言えるかな〜?」ほとんど誰の名前も言えない僕は「クソつまらん」と捨て台詞を吐いて席を立った…夢で良かった、とあとから思った。こういうことはよくある。心の…