石蹴りインザ河原オブ賽

賽の河原で。きみが蹴飛ばした石は砂上の楼閣を直撃する。砂上の楼閣という言葉に対して、僕はどうしても砂場で作ったお城をイメージしてしまう。砂なのは基礎のほうだと何度思っても、思い浮かぶのは砂のお城。


いっぽう水のほう−ここは河原だから−では泥船が沈みかけているが、船頭が多いので丘に登って安心。安心するな。船頭はすべて河童だ。

 

丘に上がって困り果てる河童。その隣で小判を持ってる猫。猫の額には舌を切られたスズメの涙が降り注ぐ。芝生が生える。青い。芝生の緑と小判の金色のコントラスト。

小判猫の仲間である真珠豚が木に登る。木からは猿が落ちてくる。あっ巻き込まれた。猿豚もろとも川に落ちる、流されていく。少し遅れてソクラテスが流れてくる。不満足げだ。たしかに私はいま流されている。しかし私はこの川が何なのかを知らない…云々。

なすすべもなく丘から見つめる河童たち。彼らも川に身を投げ、流されていった。河童は複数いた。ちゃんと話を聞いてるか?まだここは河原だ。


そこにどんぶらこどんぶらこと桃が流れてくる。桃を割る鉈は、どっかの爺が変な竹を叩き斬ったものだ。叩き割った爺の方は枯木に灰を撒き散らかして花を咲かせたとかいうペテン師でもある。善人ヅラしやがって。桜の木の下には死体が埋まってるんだろう。


裸の王様の驢馬の耳に念仏を唱えるのは誰だ。

糠に腕押し。のれんに釘。出る杭に釘。泣きっ面に釘。鬼の目にもなんとなく釘。仏の顔は三度めが正直。それにも釘打っとけ忘れんな。

 

王様の驢馬の耳には東からの風が吹きつけている。尻尾には蝿が止まっている。鶏の頭の牛の後ろ。アステリオーンは迷宮でまだ見ぬ新しい友だちを待っている。寂しいやつだ。頭は牛、身体は人間。そしてフルチン。

 

想像して見てくれ。天井から寝耳に目薬が。それを見ている障子のメアリー、ならびによく似た感じの少女たち。みんなふりふりした服を着てる。オッス!おらアリス!ウサギを追っかけてる!え?あなたがドロシー?まあ!そちらウェンディさん?あなたたち何の主人公でしたっけ。

 

ウサギが駆け抜ける。そのあと亀。のろま、努力家、子供に虐められながら。太郎は箱を開けたから来れない。ごめん、いまちょっと災厄が噴き出してて。

 

ウサギ。そのあと亀。やや遅れてアキレス。表情が苦しい。足首切られてますからねー。こちら3号車、3号車、第2集団で動きがありました。ケニア出身の人の軽快なストライド、膝の下が長い。そいつら全員を停止した矢が射抜く。光陰矢の如く、少年老い易く学成り難く、全ての道はローマへと1日でございます。蛍の光窓の雪、残りの時間もごゆっくりお買い物をお楽しみください。

 

河童、動物たち、老人たち、王様、仏さま、少女たち、足の速いやつ、遅いやつ、炎上するローマ、窓に刺さった弓矢ギリシャ人、ケニア人、垂れ目サングラスの白バイのやつ…ラクタどもを蟻がせっせと片付ける。キリギリスは歌い続けている。つられて鳴いたキジも撃たれ続けている。ごんぎつね、お前だったのか。ぽろぽろと涙が溢れる。酸っぱい葡萄をお供えする。誰かが積んだ石の上に。

これぜんぶ、お前が蹴った石だよな。