『コウルリッジの花』

…ある男が夢の中で楽園を通り過ぎた。男は、そこに訪れた証として一輪の花を授けられる。目覚めた男の手にはその花が握られていた…この男は、そのあと、どうなってしまうのだろう?
…というコウルリッジの着想を、ボルヘスが書いていた。とても好きなイメージだ。何度も思い出してきた。今日も湯舟に浸かって考えていた。

男は旅に出るだろう。旅は長く困難なものかもしれない。が、そこはどうでも良いことだ。とにかくついには辿り着くだろう。懐かしい楽園で、いつもの花を受け取るだろう。

なんでこんな簡単なことに気づかなかったんだろうな。俺は。