2017-01-01から1年間の記事一覧

宇宙、日常、戦争

最寄りの駅にはツタヤがある。ここ数ヶ月、毎週同じ映画を借りては見ないまま返すことを繰り返している。見てもないのに延滞料を払うときの馬鹿馬鹿しさはなかなかのものだ。 こないだゴダールの『アルファヴィル』をレンタルすること7回目くらいで見た。良…

眠りにつくまで

近頃は酔うまで飲めない。翌朝残る。 枕のカバーを取り替え、耳栓を押しこむ。アイマスクもおでこに控えてる。 床に就いてから布団乾燥機のスイッチを入れる。足元にノズルが刺さってる。膨らむ袋みたいなやつは外してある。こいつの「コー」って音は落ち着…

夕刻

夕刻、スーパーの前のテラス。焙煎機を世話してるいつものコーヒー売りのおばさん。オレンジ色の浮いたバンダナ、白い猫の描かれた黒いエプロン。こういう業態もやるコーヒー豆屋のパートさんだろうか。時間的に、きょう最後の焙煎だろうなと思いながら、少…

暗い部屋で胡座をかいて

コーヒーを啜りながら、向かっていた机の方を眺めた。引きっぱなしの椅子に浅く腰掛けて、机にもたれるように肘ついて仕事してる男の姿が思い浮かんだ。着ているものは僕と同じだが、僕より体格が良い。 戻るのが億劫だ。

今日もいろんなものを見た

比喩でなく死のうとした子らを見た。そうでない子らも見た。好きに描いてみなと言ったら、悲嘆や牢獄や損壊した人体を描く子たちを見た。団欒を描く子もいる、勿論いる。 大人たちの仕事を見た。仕事する大人たちを見た。見てくださいこの子の絵。この子も、…

『コウルリッジの花』

…ある男が夢の中で楽園を通り過ぎた。男は、そこに訪れた証として一輪の花を授けられる。目覚めた男の手にはその花が握られていた…この男は、そのあと、どうなってしまうのだろう?…というコウルリッジの着想を、ボルヘスが書いていた。とても好きなイメージ…

頭蓋

あるいは天蓋。どっちでも良い。同じこと。空っぽ。蓋がある。ドーム型がしっくりくる。 そこに星。もしくは穴。それかゴミ。 内側。声。跳ね返る。ずっと喋ってるこいつ。 誰?こいつしか知らない。 本当にずっとか?よく分からない。 今度は変わったぜ?よ…

休日は心の洗濯、それもこれもフルオートマティック

このあいだ洗濯機が壊れた。いっけん普通に起動するが、洗ってる途中でアラートが鳴ってそのまま動かなくなる。そうなってはじめて気づいたのだが、全自動洗濯機には緊急的に水を抜くための手動操作が存在しない。洗面器で掻い出しきれない水はどうなる?腐…

今朝は遅出のはずだった

少し時間があったのでコンビニの前でプロテインを飲みながら煙草を吸っていると、ホームレス風の車椅子の男に煙草をくれと言われた。僕は手巻きしか吸わない。 人が舐めた煙草を吸うなんて嫌だろうと思ったので、出来るだけきつく巻いた一巻きを糊は自分で舐…

参道で

10年くらい前に付けた些細な傷の痕がまだある。まったく大したことのない怪我だったのに不思議だ。 現場、というか山ん中でひとりだった。落ちてる枯れ枝を片付けといて、とだけ言われていた。やり始めてみると枝は無限にあった。だんだん横着になり、大きめ…

空色、黄色

長年の友人と、長くお世話になっているご婦人宅の庭の手入れに行った。伸びた木々の手入れのほかに、高い所になっている八朔の収穫を頼まれた。あれが気になってるから採っておいて、と彼女は言うけれど、近ごろは採ってもほとんどぜんぶ僕らにくれてしまう…