黄色いボート

湯に浸かるのは頭や身体に良いと信じている。頭の血の巡りを良くする。強ばった身体を弛める。湯をメロンソーダやその他の色にする粉があるとなお良い。あれは変な色や匂いがなんとなく面白いので、しばらくのあいだいろいろのことに直面せずに済む。

いっとき、入浴時には避けがたい退屈や後悔を紛らわせようとして、いつまでも読み切れないでいるドストエフスキーを読もうとした。あまりの鬱陶しさに湯に浸かる時間が短くなった。ああいうのは風邪で寝込むとか骨折でもしないと俺はもう読めない。

ボート型の温度計が欲しい子供のころ風呂場にあったやつ。繰り返し沈め、浮上させる。たいてい前に進み、ときおり前後する。