天使インマイアイズ

畳に寝転がって天井の蛍光灯に目をやると、白い覆いのなかに羽虫の死骸があるのとキラキラ光るものが動き回るのが見えた。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/

ブルーフィールド内視現象
これだ。網膜の血流のなかの白血球が見えるらしい。僕はこのキラキラを見るのが好きだ。
"青空の天使"と呼ばれるらしいこの現象に気づいたのは小学校の体育の時間だった。鉄棒の近く、先生がなにか説明してるとき、赤白帽、体育座り、砂。

 

まばたきせずに動き回る光の点を見ていると蛍光灯の明るさが増したり減じたりするのは発見だった。瞳孔が開いたり閉じたりするのだろうか。しばらく惚けたようにこれらを眺めて週末の終わりを過ごした。

 

埴谷雄高の短編に、閉じた眼を指で強く押すことで見える網膜像を観察し続ける男の話があった。『虚空』という本に入っていたはずだ。もう筋は忘れてしまった。「おのれという実験室」というような言葉があった気がする。それとも独房だったか。どちらにせよ大差はあるまい。

 

何がどうなっていようが、対象なんて可能事の組み合わせにすぎないという気分がある。はっとするのはそれらが見える条件のほうが見えた気がしたときだ。とはいえ、そこで見えるものも所詮は可能事のひとつにすぎない。この身体もそうだ。どんなに目を凝らしても鏡の表面そのものを見ることはできない、という喩えを思い出す。…でも、もし、ひょっとして、そこには天使が映っているのだとしたら!

 

…何を言ってるのかよくわからない。

鏡の喩えは仏教の空論がらみのやつだ。

目が乾いて涙が出た。