眠前に

降ることは分かっていたが、スケッチに出た。近所の禅寺の参道をふらふら抜けたら国道、それを少し北へ。目当ての川沿いにはギター少年。以前描いた田圃場の農道を鼻歌まじりに抜け、高速の高架をくぐったところはひなびた農地だった。
まだ場所選びやフレーミングに時間がかかるし、視野の中で同寸にしか描けない。アタリを取り、薄いインクを置き出したところで本降りになった。
雨宿りの高架下から戻ると画角の真ん中に車を停めて釣りをしている人たちがいる。好奇の目を無視するには近すぎ、諦めて帰った。釣り人と散歩老人は日曜画家の不倶戴天の敵だ。

帰宅後、もの足りないのでレンブラントの版画二葉をペンで模写した。これも同寸。俺は"経営位置"が弱い。暗算で繰り上がりを憶えておくのと同じ困難を感じる。

Gペンを使うとゴッホのスケッチを思い出す。とうに先の磨り減ったペンで、ひとつひとつのタッチを刻みつけるようにして彼は描いたのだろう。俺はまだ単に写すだけのことで眼をまわしている。