鮫が怖い

 今年はどこにも泳ぎにいかなかった。正直にいうと俺は水が怖い。溺れない程度には泳げるが、大きな水たまりが怖い。もっとはっきり言えば、大きな水たまりにいるであろう大きな水棲生物が怖い。鮫が怖い。

 昨夜、久しぶりに鮫の動画をいろいろ見た。やはり海には行きたくないなと思った。磯で切ったあんたの脛から流れる血の匂いを奴らはきっと嗅ぎ付ける。海域なんて関係ない。どうしてたまたま迷い込んでる奴がいないと言える?あんたがたまたまこのページに流れ着いたように。あいつらは来ようと思えば来れる。来ようと思わなくても来れる。いや、あいつらは来る。地続きならぬ水続きなんだ。あんなのと仕切りもない同じ水に浸かるなんて狂っている。

それにしても鮫は恐ろしいと同時になんとも美しい。殺意に形を与えるなら、あんなじゃないかと思う。鮫が、その意外なほどまん丸い口を開けて俺の身体を喰い千切るところを想像する。その時俺が迎える死の種類は失血死だろうか?内臓の破壊によるショック死?…最悪なのは溺死かもしれない。そうなる前に息の根を止めてくれるだけの慈悲を、大自然が持たんことを。